
中村佳貴
シニアコンサルタント(前職:Corporate Directions, Inc.)
これまでのお仕事について教えてください。
前職では戦略コンサルタントとして、海外市場への参入戦略や中期経営計画の立案などに従事していました。
現在もコンサルタントとして、新規事業の立案や業務改革に向けた分析、改善提案を行っています。クライアントへのヒアリングを通じて課題を整理し、将来の事業や業務のあり方を描くことが主な仕事です。
プログラミングには、趣味の競馬の予測モデルを作る中で触れたことがありました。ただ、既存のライブラリを使ってモデルを試す程度で、システムやWebアプリを一から作ったことはありませんでした。
設計やプログラミングの基礎知識もほとんどなく、受講前は「要件定義とは何か」というところからのスタートでした。
実際に受講してみて、最も印象に残ったことを教えてください。
システム開発の一連のプロセスを、自分で手を動かしながら経験できたことです。
何を作るのかを整理し、要件を定義して、設計し、実装するところまで一通り取り組みました。個々の工程について言葉として知るだけでなく、一つのシステムを作る中で、それぞれがどのようにつながっているのかを理解できました。
特に印象に残ったのは、要件定義や設計が重要だと言われる理由を、実際の手戻りを通じて体感できたことです。
自分の要求が曖昧なまま開発を進めると、途中で機能が止まったり、想定と異なるものができたりします。場合によっては最初から作り直す必要があり、後から修正する工数の大きさを実感しました。
開発プロセスを3回繰り返したことで、最初に何を決めておくべきか、どこまで要件を詰める必要があるのかを、少しずつ体感的に理解できるようになりました。
AIを使った開発について、どのようなことを学びましたか?
Claude CodeなどのAIエージェントを使った開発を通じて、AIと協働する際の基礎を学びました。
AIに指示を出すだけではなく、どのようなドキュメントを用意するのか、どのディレクトリに何を置くのか、どの層でどのような制御をかけるのかによって、成果物の品質や作業の安定性が大きく変わります。
作りたいものの要件や設計をdocsとして残し、AIが参照できる状態にすることや、誤った方向へ進まないようにガードレールを設けることも経験しました。
開発スキルそのものを身につけたこと以上に、AIエージェントと一緒に仕事を進める際の勘所が分かったことの方が、個人的には大きな学びだったと感じています。
受講前は、AIの活用はプロンプトの書き方が中心だと思っていました。しかし実際には、AIが適切に作業できる環境やルールを用意し、途中の成果物を確認しながら進めることが重要でした。
難しかったことや、想像と違ったことはありましたか?
一番難しかったのは、実装そのものよりも、実装する前に何を決めるべきかを整理することでした。
業務上の要望を、そのままシステムの要件にできるわけではありません。誰がどのように使うのか、どの情報を扱うのか、例外が発生した場合にどうするのかなどを具体的にする必要があります。
自分の中では明確に伝えたつもりでも、AIやエンジニアにとっては判断できない部分が残っていることがあります。実装を始めてから不足している条件に気づき、前の工程へ戻って修正する大変さがありました。
一方で、その経験を通じて、エンジニアが実装前に把握しておきたいことや、開発プロジェクトで時間がかかる工程を以前より具体的に想像できるようになりました。
受講を通して、どのような成長がありましたか?
業務改善の提案をする際に、何がどこまで明確になっている必要があるのかを考えられるようになりました。
これまでも、クライアントへのヒアリングを通じて業務の現状を分析し、将来のToBe像を描くことは行っていました。しかし、その中にシステムを組み込む場合、具体的にどのような要件や設計が必要なのかまでは十分にイメージできていませんでした。
研修でシステムのアーキテクチャや設計構成を学び、要件定義から実装まで経験したことで、利用者、業務フロー、データ、機能、例外処理など、事前に詰めるべきポイントの解像度が上がりました。
ヒアリングした内容をもとにToBeの業務を描き、それを実現するための簡易的なアプリの構想を作るスピードも上がったと感じています。
受講前は、システムや実装に踏み込んだ提案をした経験はありませんでした。それが現在は、完全ではないにせよ、必要な機能や構成を考え、エンジニアと相談できるところまで持っていけるようになりました。
受講後、仕事にはどのような変化がありましたか?
エンジニアと連携しながら、業務要件を整理する際の感覚が変わりました。
以前は、業務上実現したいことを伝えるところまでが自分の役割だと考えていました。現在は、その機能がどの程度難しいのか、どこは比較的実現しやすいのか、どの点を事前に詰めるべきかを、ある程度想像できるようになっています。
「この機能は大変そう」「ここは比較的すぐにできそう」といった感覚を持てるようになったことで、エンジニアとのコミュニケーションもしやすくなりました。
また、コンサルティング業務の中で、Claude CodeなどのAIエージェントを使う場面も増えました。
アプリケーション開発だけでなく、調査や資料作成などの業務でも活用しています。その際、単発の指示を繰り返すのではなく、作業用のディレクトリ構造を整え、必要なドキュメントやSkillsを配置し、AIの動きを制御するようになりました。
受講前と比べて、AIに何を任せ、どこを人が確認するのかを意識して仕事を設計できるようになったと思います。
受講期間中で、特に印象に残っている出来事はありますか?
他の受講者の発表に刺激を受けたことです。
中でも、現在のシステム設計に合わせて仕様書を動的に生成する仕組みを作っていた方の発表が印象に残っています。
システムを作るだけでなく、その状態に合わせてドキュメントを更新するところまでAIに担わせる発想は、自分の業務にも応用できそうだと感じました。
同じツールを使っていても、課題の捉え方や仕組みの作り方によって活用方法は大きく異なります。他の受講者の成果を見ることで、自分だけでは思いつかなかった使い方を知れたことも、研修の価値だったと思います。
このブートキャンプは、どのような方におすすめしたいですか?
極端に言えば、すべての人に一度は経験してほしいと思いますが、特にビジネス職の方には強くおすすめしたいです。
これまでPowerPointやExcelなどのOffice製品、ショートカットやマクロを使った仕事の進め方に慣れ、旧来の業務プロセスに最適化されている人ほど、一度AI駆動の業務に集中的に触れてみる価値があると思います。
日常業務に追われていると、慣れた方法を手放して新しいやり方へ切り替えることは簡単ではありません。研修という機会を使って、普段の仕事をできるだけAIで進めてみることで、自分の中にある思い込みを崩せます。
新しいツールの操作を学ぶだけではなく、これまで当たり前だと思っていた仕事の進め方を見直し、アンラーニングする機会になると思います。
特に、AIを業務に取り入れたいものの、チャット形式の生成AIを使うだけにとどまっている方に向いています。
AIエージェントを使い、業務のルールや必要な情報を整理して環境を作ることで、AIを単なる質問相手ではなく、継続的に作業を進める存在として活用できるようになります。
エンジニアになることを目的とするのではなく、AIやエンジニアと協働しながら、自分の業務や提案の質を高めたい方に適した研修だと思います。